STORYストーリー
理不尽な暴力に追い詰められ
極限の中を生き抜く母と娘
1948年4月3日、外国勢力による干渉に反発した済州島の一部島民が武装蜂起したことに端を発した「済州島四・三事件」。同年10月から政府が海岸線から5キロ以上離れた地域を「敵性区域」とみなし、“出入りする者は無条件に射殺する”という布告文を発令。村民たちは難を逃れるため、漢拏山を目指す。一時的に村を出ることになったアジンは、村に残した6歳の娘ヘセンのことが心配でたまらない。その頃、村では韓国軍が老人たちを容赦なく射殺していた。生き残ったヘセンは、母を捜してひとり山へと向かう。奇跡的に再会した母と娘は、生き延びるため命がけの逃避行を始める――
INTRODUCTIONイントロダクション
政府が繰り広げた
30,000人にも及ぶ無差別虐殺
権力によって翻弄される
名もなき人々の姿を鮮烈に描く
2007年にユネスコの世界自然遺産に登録され、リゾート地としても人気の高い韓国・済州島。だが、かつて凄惨な事件があったことはあまり知られていない。長らく闇に葬られてきた「済州島四・三事件」をテーマに本作を監督したのは、商業映画の脚本家としてキャリアを積んだハ・ミョンミ。移住した済州島で、名もなき女性の犠牲者たちの姿を描きたいと企画し、史実を基に母と娘の物語を完成させた。冬に漢拏山で咲く蘭〈ハラン〉のように強い人間の意志と生命力を作品名に込め、全編を済州島で撮影した。主人公アジンを演じるのは、天才子役としてデビューし、演技派女優へと成長したキム・ヒャンギ。大ヒット映画『神と共に』2部作では第39回青龍映画賞の助演女優賞、そして『無垢なる証人』では第39回韓国映画評論家協会賞の最優秀女優賞を受賞するなど、その演技力が高く評価されている。いつの時代も罪のない“弱き者”たちが、国家権力によって翻弄される姿を描き出す。

「済州島四・三事件」とは
1945年の日本敗戦に伴い、朝鮮半島ではアメリカ軍とソ連軍が進駐して占領統治が行われていた。1948年、アメリカ軍が南朝鮮での単独選挙を決定すると、南北統一を願う左派の済州島民が反発し、4月3日に武装蜂起。国防警備隊や警察、極右集団により長期間にわたり島民が弾圧され、1954年9月までに30,000人近くが犠牲になったとされる。政府の反共路線の中で長らく真相が伏せられていたが、2000年、真相究明と犠牲者の名誉回復がなされることとなった。



















COMMENTコメント
敬称略・五十音順
先の戦争が侵略戦争であったことを「知らない」人が半数に達したという。そういう人たちが「台湾有事は存立危機事態になり得る」と平気でのたまう首相を支持する。その人たちにこそ、この映画を観て欲しい。日本の植民地支配のその先で何が起こったのか。歴史に目を閉ざす者は自ら盲目となる。知らないでは済まされない歴史が、この映画にはある。
— 井上淳一(脚本家・映画監督)
生きのびようとしている人々が『国家暴力』によって理不尽な死を強いられる。
今もそうだが、暴力の連鎖をどこかで断ち切れないだろうかと感じる。
多くの人に作品を見て、今を考えてほしい。
— 呉光現(在日本済州四・三犠牲者遺族会会長)
「北朝鮮と韓国」、朝鮮半島が二つの国に分かれてしまう時、「ひとつの祖国」を求めて声を上げた人たちがいた。そしてたくさんの島の人たちが殺された! 済州島で1948年に起こった「四・三事件」を知った時の衝撃が、この映画で蘇りました。あの日、一人の少女とその母親に何が起こったのか。ふたりの命を守った大きな愛、そしてその命を奪った非情な国。本当に起こったこの事実のあまりの悲しさに、号泣するばかりです。
— 加藤登紀子(歌手)
わたしたちのいまと、日本と、地続きの済州島四・三事件を、最後まで容赦なさとともに体感として感じる映画でした。
あったことをなかったことにしない、伝える、というのはどういうことかが突きつけられます。
— 小林エリカ(作家、アーティスト)
息を止めて見守らなければならない一瞬がたくさんある映画です。
ハン・ガンの『別れを告げない』をお読みになった方におすすめいたします。
— 斎藤真理子(翻訳者)
作中に出てくる自然や日常の風景がとても穏やかだったのが印象に残っています。だからこそ、そこで暮らしていた人たちの当たり前の生活が突然壊れてしまったことの重さを、より現実的に感じました。そのため、現代社会にも繋がっているのではないか、と考えさせられました。知っているつもりでも、知らない歴史がある。この映画はそのことを、押し付けるわけでもなく、でも確実にこちらに残る形で教えてくれたと実感しました。
— 日韓学生会議メンバー
韓国の文化を愛してから、韓国の歴史を学ぶように努めています。
本作は、なかなか知られていない「四・三事件」を描くとともに、男性視点で語られがちな「歴史」というものを、女性たちの目線で描くことに挑戦しており、胸打たれました。
日本が起こした戦争が何をもたらしたのか。いまの自分の時代にどう対抗するか。これからの社会にどうあってほしいか。
過去・現在・未来すべてに向けた、覚悟が込められたフェミニズム映画。
— ひらりさ(文筆家)
すごく面白くて、三回見ました。飛躍と省略がうまい。
— 三島有紀子(映画監督)
登場人物たちの済州島訛りは、生まれ育った大阪の街で聞いた懐かしい響きだった。
幼い私を可愛がってくれた在日1世のご近所さんたちが
虐殺の嵐を生き延びた歴史の証人だったと知った時の衝撃を思い出す。
もっと早く「済州4.3」を知っていれば、と何度自分の無知を恥じただろう。
語ることも忘れることも許されなかった彼らの人生に想いを馳せる。
— ヤンヨンヒ(映画監督)
長く、語ることがタブーとされていた「済州島四・三事件」に正面から向き合い、その理不尽な暴力や殺戮を描くことに、どれほどの覚悟がいるのだろうと想像すると、戦慄する。歴史に翻弄される中で、生き延びようと凄絶な逃避行をする母の思いと、少女のまなざしに胸をえぐられた。負の歴史だとしても、それに向き合わずして、私たちは前には進めない。そう考えさせられる凄みが、この映画にはある。
— 渡辺満里奈(タレント)